では小都市国家の都市の姿が、どのようになっているか? 5万人程度の小都市を参考に見てみる事にしましょう!
その小都市の全体像は丸です。丸く編まれた蜘蛛巣か、パリの凱旋門の道路配置をイメージしたら分かって頂けると思います。
まず都市の真ん中に、小都市の象徴的存在である白亜の塔が聳え立っています。この白亜の塔は、小都市において唯一の高層建築物です。この白亜の塔は、あらゆる情報を受信・発信・記録する、情報監理センターです。いわゆる、小都市国家の頭脳に当たる部分です。この白亜の塔を囲むように諸官庁の建物が建ち並んでおり、この一帯が小都市国家の心臓部になっております。
小都市が誇れるのは、環境にやさしい街造りをしている点です。そのシンボルになっているのが、花壇や緑地を配置した街造りです。官庁街も例に漏れず、建物の角々に花壇や緑地が配置されていて、訪れる市民の心を和ましてくれています。
官庁街を出ると、こんもりとした森の中に市民が娯楽を楽しむ、図書館・博物館・美術館・スポーツ競技場・シアター・イベント会場などの文化施設が見えてきます。この施設の中には、プールや遊戯施設も備えられています。
そこを抜けしばらく進むと、セパレートされた林間の中に教育関連施設が見えてきます。ここが、小・中・高・大一貫教育の場である学びの聖地です。職業訓練所や研究所も、この聖地の中にあります。
ここを抜けると、幾重にも仕切られた緑地が見えてきますが、その緑地の中に癒しの園(医療施設)や養護施設などがあるのです。ここで目を引くのは、丸を基調にした建物の形と、白を基調にした建物の色と、その建物を囲むように配置された花壇の美しさです。その美しさのせいか、道行く人の顔に少しの暗さも湿っぽさも見られません。
さて、この緑地を出て山の方に足を運ばすと、やがて市民公園が見えてきます。その市民公園のすぐ側に、市民が暮らす住宅街があるのです。この住宅街の一角に自由収得市場が置かれ、住民が手軽に収得できるよう配慮されています。さらに、収得市場に連なるよう美容院や理髪店やレストランなどが配置されており、この辺りが小都市の繁華街になっています。
街造りの良さは随所に見られますが、市民の安全を考慮して、住宅街の要所要所に保安署や消防署などを配置しているのもその一つでしょう。
その住宅街を抜けしばらく行くと、森林沿いに鉄道の駅やドローン発着所が見えてきます。ここまでが都市生活空間です。この先に、工場や農場などの生産地があるです。(生産地の詳細については、別な機会に述べることにします。)
では次に、都市交通事情がどうなっているか? 見てみる事にしましょう。
市内における市民の足は、通常、動く道路が担っています。近隣の都市に行く場合は鉄道が利用され、遠隔地の都市に行く場合は、ドローンが利用されています。鉄道は主に、他の都市との往来に利用をされるわけですが、都市の外側を走る循環鉄道としても利用されています。マイカーはありませんが、物資の輸送や建設現場・生産工場・農林業などの生産地では、車が使われています。勿論、排気ガスを出さない、電気自動車が使われています。
動く道路について、少し説明したいと思います。この動く道路網は、白亜の塔から都市郊外に向けて四方八方に張り巡らされており、どこから乗っても都市のどこにでも行けるようになっています。と言うのも、この動く道路は、縦の循環道路から横の循環道路への乗り換えも、横の循環道路から縦の循環道路への乗り換えも、降りなくてもできるようになっているからです。またこの動く道路は、低速・中速・高速の3路線に分かれていて、急ぐ時は高速の路線を使い、普通に行く時は中速の路線を使い、ゆっくり行く時は低速の路線を使います。途中路線を変えたい場合も、自由に乗り換えできるようになっています。この動く道路の優れている点は、新設する時も、移設する時も、撤去する時も、大掛かりな工事がいらないところです。
ここで、街の景観にも関わることなので、ライフラインとエネルギーについて触れておくことにしましょう。
都市のインフラは、すべて自己完結型になっています。自己完結型と言う意味は、飲料水も家庭内(1区画)で作り、汚水も家庭内(1区画)で処理し、電気も家庭内(1区画)で作る、という意味です。ですから、水道管も、汚水管も、ガス管も、電線も、電話線も、電柱も、鉄塔も、いりません。それができるのも、奉仕社会では電線のいらない無線電気を使っているからです。この無線電気については、別途説明したいと思います。
さて小都市国家には、誇れるものが2つあります。1つは、都市全体が芸術的に造られている点です。奉仕社会には、私有財産がありませんから、個人の思惑によって都市計画が邪魔されることがないのです。したがって、建物の向きや色も統一できるし、道路も緑地帯も芸術的な感覚を持って敷設できるのです。また奉仕社会では、商行為がありませんから、宣伝用の広告塔も、看板も、旗も、のぼりも、ありません。また前述したように、電柱も鉄塔も電線もありませんから、都市の景観は実にスッキリしています。ですから都市を上から眺めると、美しい絵模様に見えるのです。
小都市国家が誇れるもう一つは、人間と自然との棲み分けができている点です。
近年人里に、猿や猪や熊などの野生動物が出没するようになりましたが、これは人間が金儲けのために、ゴルフ場を造ったり、別荘を建てたり、高速道路を作ったりして山を破壊してきたからです。奉仕社会では、ゴルフ場を作ることも、別荘を建てることも、高速道路を作ることもしません。奉仕社会では、人と野生動物との棲み分けを、きっちり守っているのです。
ここで述べた都市造りは、地理的条件によっても科学の進歩や奉仕社会の熟成度によっても変わってきますので、一つのモデルとして考えてください。
さて、ここまで奉仕国家の概要について説明してきましたが、まだまだ説明不足のところがあると思います。説明不足のところは、次の[第3章 奉仕社会]の中で補足したいと思います。